相続税法の改正ポイント

相続対策の知識

相続税法の改正

相続税法の改正

2015年(平成27年)1月1日より、相続税法が改正されました。
改正されたポイントは4つです。

  1. 基礎控除額の引き下げ
  2. 最高税率引上げ
  3. 小規模宅地等の特例対象地の拡大
  4. 未成年者控除、障害者控除の控除額の変更

順番に解説してきます。

相続税法改正ポイント1.基礎控除額の引き下げ

相続税法改正ポイント1.基礎控除額の引き下げ

基礎控除額とは、相続財産(相続税評価額)の合計から差し引くことのできる金額の事です。
この部分には税金はかかりません。

この基礎控除額の引き下げにより、これまで対象外だった家庭にも、納税の必要性が出る可能性が出てきました。

相続税の基礎控除が引き下げ改正
相続税の基礎控除が引き下げ改正されました。相続税の基礎控除の引き下げは、資産家ではない一般的な家庭にこそ影響の大きな改正です。何故かと言えば、課税対象者が増加することになるからです。

相続税法改正前の納税対象

2014年(平成26年)12月31日まで 5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)

相続税法改正後の納税対象

2015年(平成27年)1月1日から 3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

※4割引き下げ

相続税法改正に伴う納税額の例

相続税法改正前には、税金がかからなかった人も課税対象になってしまうケースが増加します。
都市部で一軒家を所有している方などは、課税対象になる可能性高くなっています。
たとえば、ご主人が亡くなり、法定相続人が3人の場合を見てみましょう。
※妻・子供2人の場合

相続税法改正前:2014年(平成26年)12月31日までの場合

基礎控除額:5,000万円+(1,000万円×3人)=8,000万円

相続税法改正後:2015年(平成27年)1月1日から

基礎控除額:3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円

になります。

仮に財産が8000万円(不動産6000万円+現金2000万)で配偶者が法定相続分を取得。
『配偶者の税額軽減の特例』を適用した場合、現在の基礎控除額では3,200万円が課税遺産総額になります。

相続税額は175万円です。
子供が相続放棄して配偶者のみが相続した場合は0円になります。

相続税法改正は一般的な家庭への影響が大きい

この変更は、資産家ではない、一般的な家庭に大きな影響を与える改正といえます。
この改正により、相続税がかかる人の割合が、これまでの4%から5割増以上になると予測されています。
ちなみに、今回の法改正では相続税だけでなく、贈与税も改正されました。

贈与税の税率と非課税枠
贈与税の税率・パーセンテージおよび贈与税の控除・非課税枠は、生前贈与で相続税対策するさいの重要な判断ポイントになります。贈与税対策をおこなうことは、相続税対策にも繋がります。

相続税法改正ポイント2.最高税率引上げ(増税)

相続税法改正ポイント2.最高税率引上げ(増税)

2015年(平成27年)1月1日以降の相続(遺贈も含む)より、税率の区分が6段階から8段階に変更されました。
さらに最高税率が50%から55%に引き上げられています。

税率・控除額の速算表
法定相続分に応じた各相続人の取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超 3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超 5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超  1億円以下 30% 700万円
1億円超 2億円以下 40% 1,700万円
2億円超 3億円以下 45% 2,700万円
3億円超 6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7200万円

※2015年(平成27年)1月1日以降の相続に適用されます。

ただし、相続税法の改正は増税だけではありません。
減税措置に関しても改正がありました。
これは相続税の増税に対する緩和措置となっています。

相続税法改正ポイント3.小規模宅地等の特例対象地の拡大

相続税法改正ポイント3.小規模宅地等の特例対象地の拡大

課税価格を算定する際、被相続人等の居住用や事業用などの土地で要件を満たすものは評価減(50%~80%)することができます。
平成27年からは、これらの評価減の拡大が行われています。

小規模宅地等の特例とは?

事業・居住の継続の観点から、相続によって取得した財産のうちに被相続人の事業の用、又は居住の用に供されていた宅地がある場合の特例。
一定の要件を満たすものはその評価額を最大80%減額できる。

この特例の対象となる宅地は、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族の事業の用(不動産貸付を含む)、または居住の用に供されていた宅地となります。

特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積の拡大
改正前:240㎡ → 改正後:330㎡
特定居住用宅地等と特定事業用宅地等の重複適用

特定居住用宅地等と特定事業用宅地等の両方があった場合、相続税法改正以前は、面積調整が行われ実質的にどちらか1つの上限までしか適用できませんでしたが、改正後は、それぞれの上限面積まで重複して適用可能になりました。
(合計で最大740㎡まで可能になっています。)

相続税法改正ポイント4.未成年者控除額、障害者控除額の変更

相続税法改正ポイント4.未成年者控除額、障害者控除額の変更

相続税の納付額を計算する際に、相続人の中に未成年者、障害者の方がいる場合、本来納める金額から年齢に応じて税額を控除することができます。
平成27年からは、その控除額がUPしました。

未成年者控除 

相続税法改正前:20歳までの1年につき 6万円
相続税法改正後:20歳までの1年につき 10万円

障害者控除

相続税法改正前:85歳になるまでの1年につき 6万円(特別障害者の場合12万円)※
相続税法改正後:85歳になるまでの1年につき 10万円(特別障害者の場合20万円)※

(※)特別障害者(障害者1・2級)の場合には12万円(改正後20万円)

【参考例】相続人が17歳の特別障害者の場合(改正後)

未成年者控除 (20歳-17歳)×10万円=30万円
障害者控除 (85歳-17歳)×20万円=1360万円

尚、本人の税額から控除しきれないときは、同じ相続で財産を取得した扶養義務者の税額から控除ができます。

相続税法改正で納税する必要が増えたのか?

相続税法改正で納税する必要が増えたのか?

今回の基礎控除の減額や相続税率が改定されたからいっても、誰もが納税対象者になるわけではありません。
基礎控除のほかに、その他にも大きな税額軽減措置があります。

それは、「配偶者の税額軽減」と言う、長年連れ添った配偶者には、1億6000万円まで(または相続する取得価格が法定相続分以下)なら、税額が丸ごと控除されるがあるからです。

そのため、夫の遺産を一定額まで妻が受け継ぐことで、純資産が2億円程度までであれば、まず税金は発生しません。
では、この配偶者控除が使えなくなる場合、どうなるのかを見てみましょう。

相続税改正における2次相続の増税額とは?

男女の平均寿命から考えると、夫が先に亡くなり、後で妻が亡くなるということケースが多いと思います。
夫が亡くなったときに発生する相続を「一次相続」と呼び、妻が亡くなったときに発生する場合は「二次相続」と呼びます。
今回の改正の影響は、この1次より、2次の方が大きくなります。

その理由は、配偶者がいれば配偶者軽減があるためです。
配偶者軽減とは、配偶者の取得した財産が、法定相続分または1億6000万円のどちらか多いほうまでなら、配偶者には税金がかからない措置です。

二次相続では、この配偶者軽減が使えません。
そのため、増加額が大きくなってくるのです。

下記の表は、相続税改正前と改正後の税額を比較した早見表となっています。
一次相続で課税価格が7500万円で、相続人が配偶者と子1人のケースです。
税額が173万円増加していることが分かりますよね。

相続税改正による増税額早見表

課税価格 法定相続人の構成 単位:万円
配偶者がいる場合 配偶者が死別している場合
子供1人 子供2人 子供3人 子供4人 子供1人 子供2人 子供3人 子供4人
5000万 40 10 0 0 160 80 20 0
7500万 173 144 106 75 405 345 270 210
1億 210 215 213 225 620 420 430 390
1億5千万 320 285 315 300 860 640 540 540
2億 420 400 405 450 960 840 660 670
2億5千万 460 410 425 450 1030 920 960 720
3億 560 560 540 550 1280 1120 960 1080
3億5千万 560 560 540 600 1600 1120 980 1080
4億 560 560 630 600 1700 1120 1280 1080
4億5千万 580 568 630 600 1700 1160 1280 1080
5億 705 705 688 750 1700 1410 1280 1440

また、法定相続人が法定相続分で取得したものとした金額に、それぞれ超過累進税率を乗じて計算。
それを合算して総額を算出しています。

つまり、法定相続人の数が1人減れば、税率が上がる場合もあります。

2次相続では小規模宅地等の特例が使えないケース

小規模宅地等の特例は、平成22年度税制改正で適用範囲が狭まりました。
小規模宅地等の特例は、前述の通り、被相続人の自宅であれば、330平米まで80%減額という大きな減額があります。

この特例の適用を受けるには、一定の親族が自宅の敷地を取得する必要があります。
一次相続で配偶者が取得すれば、もちろん適用が受けられます。

しかし、二次相続で別居の子(持ち家あり)が取得する場合は適用が受けられません。
その分、負担が増加しているわけです。

相続税法改正のポイントは上記の通りとなっており、今回の改正を通じて、相続や贈与で税金が発生する範囲が変化しました。
今までは課税されなかった人でも課税の対象になっている可能性が出てきました。

また、配偶者控除が使える1次相続なのか?
使えない2次相続なのか?
それで、状況は大きく変わります。

自分は大丈夫かどうか心配な方は、相続専門の税理士またはファイナシャンルプランナーに現状の整理をお願いしてみると良いでしょう。

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