遺産相続は、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)によって分割をおこないますが、話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所への調停申し立てることになります。
調停が不正不成立の場合には、家庭裁判所での審判、審判の内容に不服がある場合には抗告による高等裁判所での審判によって解決します。
平成27年度の司法統計によると、家庭裁判所での遺産分割の事件数は、全国で12,615件になりました。
中には、審理期間が3年を超えるケースもあり、解決までに長い時間を要することがあります。
遺産分割のトラブルは、財産の多少にかかわらず発生します。
遺産分割の事件のうち、認容・調停が成立したものの遺産価額をみると、5,000万円以下の争いが75%以上を占めています。

遺産相続と弁護士
遺産相続でもめてしまった場合、あるいはもめないように準備をしておくには、法律の専門家である弁護士に交渉や相談を依頼するのが一般的です。
弁護士とは、原則として司法試験に合格し、司法修習生として修習を終え、弁護士名簿に登録した法律の専門家です。
弁護士業務は、原則として、弁護士資格を持つ人の独占業務です。
また、弁護士資格を持っていると、登録などをすることで、司法書士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士などの業務をおこなうことができます。
具体的に弁護士が必要となる主なケースを考えてみましょう。
遺産相続に弁護士が必要なケース1.遺言書の作成
遺言がないと、相続人同士でトラブルが発生しやすくなりがちです。
争いを避けるためには、法律上不備のない遺言を作成することが大切です。
遺産相続に弁護士が必要なケース2.遺言の執行
遺言の効力が発生したのち、遺言の内容が実行されるよう手続き(相続人の廃除またはその取り消し、認知、不動産の登記移転など)がなされなければなりません。
そのため、遺言で手続きをおこなう人(遺言執行者)を指定します。
未成年者および破産者以外であれば誰でも遺言執行者になることができますが、弁護士に依頼するケースが多いようです。
遺産相続に弁護士が必要なケース3.遺産分割
遺産分割協議、調停、審判の代理人として弁護士を立てることで、依頼人の負担が減り、問題の早期解決が望めます。
遺産相続に弁護士が必要なケース4.遺留分
遺言により本来遺産を引き継ぐ相続人に不公平が発生した場合、遺留分を請求するために遺留分減殺請求をしなければなりません。
遺留分減殺請求には時効(1年間)があるため、弁護士に依頼することで速やかに手続きを済ませることができます。
また、遺留分を請求された側も、弁護士を立てることで、交渉、調停、裁判の負担が軽減されます。
遺産相続に弁護士が必要なケース5.相続放棄
プラスの相続財産よりもマイナスの相続財産が多いために相続を放棄する場合や、プラスの財産の範囲でマイナスの財産を相続する(借金を背負わない)場合は、相続開始後の3か月以内に、相続人全員が共同で家庭裁判所に届け出なければなりません。
3か月以内に届け出がないと、すべての権利義務を相続したことになります。
弁護士に依頼することで、速やかに届け出ができるでしょう。
遺産相続と弁護士費用
弁護士に相談をする場合には、費用が発生します。
相続財産が多く、弁護士費用を差し引いても十分な額が残るケースあれば、弁護士に依頼をしたほうがよいでしょう。
弁護士報酬は、2004年4月から自由化され、個々の弁護士が自由に設定できるようになりました。
しかし、日本弁護士連合会が定めていた旧報酬規定をもとに、料金体系を決めている法律事務所や弁護士が多いようです。
遺産相続の弁護士費用その1.法律相談
報酬の種類 | 弁護士報酬の額 |
初回市民法律相談料 | 30分ごとに5,000円から1万円の範囲内の一定額 |
一般法律相談料 | 30分ごとに 5,000円から2万5,000 円以下 (専門 の場合) |
遺産相続の弁護士費用その2.訴訟
報酬の種類 | 弁護士報酬の額 |
着手金 |
事件の経済的利益の額 300万円以下の場合 8% 300万円を超え3,000万円以下の場合 5% + 9万円 3,000万円を超え3億円以下の場合 3% + 69万円 3億円を超える場合 2% + 369 万円 (最低額は10万円) |
報酬金 |
事件の経済的利益の額が 300万円以下の場合 16% 300万円を超え3,000 万円以下の場合 10% + 18万円 3,000万円を超え3億円以下の場合 6% + 138万円 3億円を超える場合 4% + 738万円 |
遺産相続の弁護士費用その3.調停及び示談交渉
報酬の種類 | 弁護士報酬の額 |
着手金・報酬金 |
訴訟事件に準ずる。ただし、それぞれの額を3 分の2 に減額することができる。 ※示談交渉から調停、示談交渉または調停から訴訟その他の事件を受任するときの着手金は、訴訟事件の2 分の1 (着手金の最低額は10万円) |
遺産相続の弁護士費用その4.日当
区分 | 弁護士報酬の額 |
半日(往復2時間を超え4時間まで) | 3万円以上5万円以下 |
一日(往復4時間を超える場合) | 5万円以上10万円以下 |
遺産相続の弁護士費用その5.遺言書作成
分類 | 弁護士報酬の額(手数料の額) |
定型 | 10万円から20万円の範囲内の額 |
非定型 基本 |
経済的な利益の額が 30万円以下の場合 20万円 300万円を超え3,000万円以下の場合 1% + 17万円 3,000万円を超え3億円以下の場合 0.3% + 38万円 3億円を超える場合 0.1% + 98 万円 |
非定型 特に複雑又は特殊な事情がある場合 | 弁護士と依頼者との協議により定める額 |
公正証書 | 上記の手数料に3 万円を加算する |
遺産相続の弁護士費用その6.遺言執行
分類 | 弁護士報酬の額(手数料の額) |
基本 |
基本 経済的な利益の額が 300万円以下の場合 30万円 300万円を超え3,000 万円以下の場合 2% + 24万円 3,000万円を超え3億円以下の場合 1% + 54万円 3億円を超える場合 0.5% + 204 万円 |
特に複雑又は特殊な事情がある場合 | 弁護士と受遺者との協議により定める額 |
遺言執行に裁判手続を要する場合 | 遺言執行手数料とは別に、裁判手続に要する弁護士報酬を請求できる |
遺産相続の弁護士費用その7.遺産放棄
分類 | 手数料の額 |
手数料 | 10万円程度 |
遺産相続の弁護士費用その8.遺産分割協議
報酬の種類 | 弁護士報酬の額 |
着手金 | 20万円~ |
報酬金 | 経済的利益の額によって異なる |
遺産相続の弁護士費用その9.遺留分減殺請求
分類 | 弁護士報酬の額 |
遺留分減殺請求の意思表示のみ (内容証明郵便の送付) |
3~5万円 |
※減殺請求の場合は、請求額や獲得額によって着手金と報酬金の額が変わります。
弁護士に依頼をしたいけれど、経済的な余裕がない場合には、法テラス(日本司法支援センター)に相談ができます。
積極的に利用してみましょう。
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