相続や遺贈によって財産を取得しても、すべての人に相続税がかかるわけではありません。
一定の金額までは基礎控除額(非課税枠)があり、これを超える場合に相続税が発生します。
相続した財産が多いほど税額が高額になりますが、財産の評価額を下げる相続税対策によって節税ができます。
評価を下げるのに有効な相続財産は、不動産です。
現金と不動産の評価を比較してみましょう。
現金は、額面額がそのまま評価額になります。
たとえば、現金が1億円ある場合、その評価額は1億円です。
いっぽう、不動産の場合は、特例や評価方法によって評価額を下げる対策が可能です。
土地の相続税評価額
相続税評価額のなかで、大きな割合を占めるものは土地です。
国税庁が平成27年12月に発表した「平成26年分の相続税の申告状況について」によると、相続財産の金額のうち、41.5%を土地が占めました。

土地といっても宅地、田、畑、山林など、用途はさまざまです。
相続税評価額の計算をするときは、用途ごとに土地を評価します。
土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。
路線価方式
路線価とは、市街地などの道路に付けられた価格のことで、道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価格を、千円単位で表示しています。
その年の路線価は、国税庁が毎年7月に公表される路線価図で調べることができます。
土地の評価額は、対象となる土地の路線価を、土地の形状等に応じた補正率で補正し、その土地の面積を掛けて計算します。
補正率は、宅地の形状、(間口が狭い、奥行きが長い、不整形地、がけ地など)や、道路との関係(道路からの奥行き距離、道路に面する方向など)、地区区分(普通住宅地区、繁華街地区、ビル街地区など)などによって異なります。
倍率方式
路線価が付いていない地域では、倍率方式によって土地を評価します。
その土地の固定資産税評価額に、一定の倍率を掛けて計算します。
固定資産税評価額は、市区町村役場(東京23区は都税事務所)で確認することができます。
路線価図や評価倍率表の見かたは、国税庁のホームページで閲覧できます。
貸借地の相続税評価額
土地の評価は、利用形態によっても異なります。
自分が使用する土地(自用地)か、有償で貸している土地(貸宅地、貸家建付地)か有償で借りている土地(借地権、定期借地権)かによって、計算方法が変わります。
無償で貸借している場合は、自用地として評価します。
貸している土地
貸宅地
借地権が設定された土地
貸宅地の評価額 = 自用地の評価額 ×( 1 - 借地権割合 )
貸家建付地
所有する土地に貸アパート、貸マンション、貸家などを建て、他人に貸している土地
貸家建付地の評価額 = 自用地の評価額 × ( 1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合 )
借りている土地
借地権
土地を有償で借りて、その土地に自分が所有する建物を建てられる権利
借地権の評価額 = 自用地の評価額 × 借地権割合
定期借地権
期限が決まっている借地権で、満了後は貸主に土地を更地にして返還しなければならない
定期借地権の評価額 = 自用地の評価額 × 定期借地権割合 × 逓減率
借地権割合は、路線価図や評価倍率表に記載されています。
小規模宅地等の評価減の特例
被相続人が、居住用(自宅)、事業用、貸付事業用として使っていた宅地は、一定の要件を満たすと評価額が減額されます。
これを、小規模宅地等の評価減の特例といいます。
特例を受けるためには、原則として、相続税の申告期限(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内)までに相続財産が分割されていなければなりません。
宅地の区分 | 限度面積 | 減額割合 | 相続人 |
特定居住用宅地 (自宅の土地) |
330㎡ | 80% | ・配偶者(申告期限までに売却してもよい) |
・同族親族(申告期限まで所有・居住していること) | |||
・持ち家のない別居親族(相続開始3年以内に、自分または配偶者の持ち家に住んだことがなく、申告期限まで所有していること) | |||
特定事業用宅地 (会社・工場の土地) |
400㎡ | 80% | 事業を引き継ぐ親族(申告期限まで所有し、事業を引き継いでいること) |
貸付事業用宅地 (アパート・駐車場などの土地) |
200㎡ | 50% | 貸付事業を引き継ぐ親族(申告期限まで所有し、貸付事業を引き継いでいること) |
小規模宅地等の特例にはそれぞれ要件が細かく定められています。
制度を利用する際には、税理士などの専門家に相続税対策の相談することをおすすめします。
建物の相続税評価額
建物の評価は、1棟ごとにおこないます。
居住用や事業用として自分で使用している建物(自用家屋)の評価は、固定資産税評価額を1.0倍を掛けて評価します。
そのため、固定資産税評価額が建物の評価額となります。
建設中の建物は、固定資産税の評価額が付けられていないため、その家屋の費用現価の70%の金額で評価します。
有償で貸している建物は、自用家屋よりも評価が下がります(無償で貸している場合は、自用家屋として評価します)。
また、建物だけでなくその付属施設も評価対象となり、分類によって評価方法が変わります。
家屋と構造上一体となっている設備(電気設備、ガス設備、衛生設備、給排水設備など)
家屋の評価額に含まれる
門、塀、外井戸などの設備
評価額 = (新たに建築する場合にかかる費用の額(再建築価額) - 建築時からの経過年数に応じた現価額 )× 70%
庭園設備(庭木、庭石、あずまや、庭池など)
評価額 = 調達価額(庭園設備を取得する場合にかかる費用の額) × 70%
不動産の相続税評価額を下げて相続税対策
不動産の活用によって、さまざまな節税方法があることがわかりました。
しかし、財産のほとんど(またはすべて)が不動産である場合には、財産を分けることができない、相続税を支払うことができないなどの問題が発生します。
相続税対策をおこなう際には、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
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